吟は変鎖が解け、狐の姿へと変わる。

何度確かめても、息はしていない。

「吟」

涙を流さず、俺は笑顔を崩さない。

扉から龍姫が入ってくる。

「逝ってしもうたか」

「ああ」

何度見ても、満足げな顔をしている。

「丞ちゃん、吟のコアは、どうする?」

「形見として、貰っておく」

「うむ」

龍姫が詠唱し、吟の中からコアを取り出した。

「そなたと共にいられる吟は、本当に幸せじゃったな」

「そうだといいけどな」

龍姫からコアを受け取り、自分の中へと組み込んだ。

「これから、どうするのじゃ?」

「少し、一人で外を歩いてくるよ」

「うむ」

「皆には、内緒にしていてくれ」

「解ったのじゃ」

「後、こいつは封印しといてくれ」

俺が取り出したのは、増長の入った溶液の瓶。

『おいおい、俺を殺すんじゃねえのか?』

「許さないって言っただろ。殺す事だけが全てじゃないんだよ」

闘う事が全てだとするのなら、何もしない事は辛いはずだ。

『拷問だぜ、おい』

「お前には感謝してるが、これとそれとは話は別だ」

『誰かが封印を解くのを待つか。そんときゃ覚えてろよ』

「その時には、俺はいないよ」

封印を解くにしても、時間がかかるだろう。

多分、俺は死んでいるに違いない。