「お前は飽きさせないくらい、美味だった」

「本当、そなたは変わらぬな」

お互いに笑顔になりながらも、別れの時間は近い。

「すまぬ」

龍姫は、顔の位置を合わせるために膝を付く。

「私の起こした事だ」

「ずっと、共に生きておると、思っておった」

少女のように、涙を流す。

「生を受ければ、死は常に隣り合わせ。それが今日だっただけの話」

「別れは、嫌じゃ」

「私も、お前を味わえなくなるのは、残念だ」

「吟、ワラワもいつかそなたの元に行く」

「その時にでも、また、味あわせてもらう」

龍姫は吟の頬にキスをし、立ち上がる。

「後は、そなたに任せる」

龍姫は褐色の娘と久遠を説得し、三人で部屋を出て行った。

「王女様」

少し離れた位置からロベリアが声を上げる。

「ロベリア、お前が丞を守れ」

「はい」

「必ずだ」

「私の翼で王子様の全て守ります」

「それと、お前のもち肌を丞にも味あわせてやれ」

「はい」

短い会話でも、二人は満足したような空間を作り出す。

「では、ごゆるりと」

ロベリアも、部屋から出て行く。

残ったのは俺と吟だけになる。