「丞」

俺の頬に片手を添える。

「私は好きに生きた」

目にはいつものような元気はない。

ただ、満足げではある。

「うん」

「こうなったのも、自分のやりたいようにやったからだ」

何で、そんなに微笑む事が出来るのか。

怖いはずなのに、まだやりたい事があるはずなのに。

「でも、後悔がないといえば嘘になる」

やはり、そうか。

誰だって、遣り残した事はあるんだ。

それが、長年生きてきたとしてもだ。

「うん」

「私は、お前の子供も産んでみたかったなあ」

「うん」

「でも、しょうがない事だ」

契約妖魔になるつもりはないという事である。

妖魔のままで、死を選ぶのだろう。

「もし、来世があるとするのなら、もう一度、お前と二人で、遊びたい」

「俺もだ」

見つめ合っていると、背後の扉が開く。

「吟ちゃん!」

「お母さん!」

褐色の肌を持ち、薄紫色を後ろ髪と紫の前髪を持った女の子と久遠が走ってくる。

その後を続いて、爺さん、親父、美咲、千鶴、クルト、龍姫が入ってくる。