「でも、信じたい」

「王子様」

そう、いつものように何ともないような姿で俺の前に立って欲しい。

俺は、吟がいたから、生きてこれた。

吟がいなくなるなど、考えられない。

だけど、不安が拭えない。

焦燥に駆られたまま、俺は地元の駅へと降り立った。

地元は、何が変わったわけではない。

そう、何も変わらない。

俺とロベリアは足を学校の近くにある廃ビルへと向けた。

しかし、廃ビルは、壊されている。

「そうか」

皆をミールオルディンから守るために、転移陣を壊したんだ。

だとすれば、二度と龍姫の元へ辿り着く事は出来ないのではないか。

転移は高等魔術。

安易に使えるような妖魔はいない。

「どうすりゃいい」

誰かが、後ろから俺のコートの裾を引っ張る。

背後を向くと、龍姫が立っていた。

「龍姫」

「よう、帰ってきたのじゃ」

しかし、表情は明るくはない。

表情から読み取れるのは一つ。

「龍姫、吟は?」

「まだ生きてはおる。しかし、長くはない」

「そうか」

予想していた通りの出来事は、回避出来ないようだ。