「奇麗事だけでは済まされないと言ったでしょう。聞く耳を持たぬ者を延々と説得するほど悠長な時間をかけている暇はないわ」

「渚さん、好きでもない奴に襲われる感覚ってのは解るのか?」

「私は、選ぶ権利は与えたつもりよ。パートナーは異種であるという条件付きではあるけれどね。その権利を放棄したのはあちらさんよ」

秋野はため息をつく。

「身勝手な権利だ。それで、里の妖魔を殺した理由は?」

「あまりに年老いた妖魔や人間は子を作れない。それに、従うにしろ、従わないにしろ、言っても聞かない輩は政策には必要ないわ。子を産み落とせる女性を除いてね」

「結局、恨みを産む事になる。今までと、何も変わりはしない」

「おい、葉桜、横からしゃしゃり出てきてるんじゃねえ、面倒くせえ」

俺には理由など関係ない。

やった事の責任はきっちり取らせる。

それだけだ。

「刃、どうするつもりだ?」

「最初から迷いなんぞない。こいつらを潰すだけだ。邪魔をするなら、最初にお前を潰す」

「今の魔力のない状態でか?」

俺の中身が見えているのか。

「関係ねえ」

構える。

「死ぬつもりか?」

「俺は根っからの改革派だ。共存なんて考えは、認めん」

「私はお前が好きだから、止めるぞ」

「なに?」

ニオイも気配も感じさせずに真後ろに立っていた燕の手刀によって、俺は倒れた。