刹那、背後に影を感じる。

咄嗟に回避すると、光る何かが俺の首をかする。

俺は首を押さえながら背後を見ると、誰もいない。

しかし、攻撃されたのも確かだ。

「暗殺者か」

闇の中から攻撃を受けている以上、ニオイを確認できる暇もない。

その時、闇の四方八方から、ナイフが飛び掛る。

「ち!」

ギリギリのところで回避するものの、二本程度が腕に刺さる。

明らかに、俺を始末しにきている。

しかし、何故、燕の行動を見逃した。

俺をいつでも殺せるという余裕か?

燕を監視して、冬狐の行動も見破るつもりだったのか?

燕も後で始末する魂胆か。

「燕の事は適当でいいにしろ、冬狐を泣かせなくなるな」

時間的に考えれば、俺を狙っているのは改革派も保守派も潰した輩だろう。

暗殺というからには、一人できたに違いない。

逆に、一人であるから最強。

無駄な足音が立たず、密かに殺される。

厄介だ。

闇夜の中では、最強とも言える能力と言っていい。

「闇、か」

俺は辺りを確認しようとする。

しかし、確認を許さず、攻撃は止む事はない。

ナイフの使いも慣れているようで、平気で十本のナイフを投げつけてくる。

俺は一本のナイフを掴みとり、飛んできた方向に投げ返す。

すると、ナイフは闇の中に消えた。

次の瞬間、真後ろからナイフが現れ、俺の脇をかすった。