夢を見た。

俺と冬狐が遊んでいる夢だ。

冬狐がまだ、連れ去られる前の話だ。

冬狐は明るくて、活発といってもいい。

何よりも、身近な物に対しては、慈母神のような優しさを持っている。

遊んでいる途中に里で孤独に歩いていた子犬を見捨てるような事はしなかった。

抱きかかえて、自分の家で飼うとか言い出すような女だ。

でも、別れを告げてしまうのだ。

連れていかれてしまい、好きだった犬の面倒さえ見ることが出来ない不憫な女だ。

結局、俺が面倒を見る事となり、早くして犬は死んだ。

今でも墓はある。

いや、潰されてないかもしれない。

犬の事はさておき、今も妹を人質に取られるような、間抜けな女だ。

そして、俺の隙をついてコアを抜くような、狡猾な女だ。

腹が立つ。

冬狐が、自分の意に反するような事をしているのが、無性に腹が立つ。

だから、冬狐やミールオルディンに何かをしなければ、気がすまない。

しかし、俺は夢を見る事しか出来ず、動く事が出来ない。

「じーんじんじんじんじん」

いきなり、視界が開けた。

目の前には燕の顔が存在している。

「俺は」

周囲を見ると、家の中らしい。

「私のお手柄だな。ほら、お前の唇は私の物だ。さっさと寄越せ」

「黙れ、小娘!」

ナックル・パートで燕の頬に打ちつける。