「祈るだけでいい」

「何?」

「それだけでも、十分だ」

「本当に、言ってるのか?」

俺は背中を向ける。

「今みたいに、何かあった際にお前達を心配する人だっているんだよ」

三人は口を噤んだ。

「だから、祈るだけでいい」

俺は龍姫とクルトの元へと向う。

「出来るか?」

「吟の言っていた事は可能じゃ」

「姫ちゃん、クルト、頼む」

クルトが宙を見つめると、次元に裂け目が出来る。

龍姫が高速で呪文を唱え始めた。

すると、魔法陣が裂け目の上に描かれる。

「今じゃ」

アカ・マナフと子鉄は先に魔法陣に飛び込んだ。

「姫ちゃん」

「何じゃ」

「吟に、必ず戻ると伝えておいてくれ」

「解ったのじゃ」

俺も魔法陣に突っ込む。

空間転移は一瞬のようで、降り立った先は森の中である。

魔法陣は静かに消えた。

ここからは、命を駆けた行動を取る事になる。

今回は、回復薬など存在はしない。

大怪我を負えば、その状態で突き進むしかない。

今まで、都合が良すぎたんだろう。