東海達が、龍姫の神殿の前にいる理由は何なのかを知らない。

妖魔でも、退魔師でもなく、一般人だ。

そもそも、一般人は何も知らないはずだ。

「退魔師の人達がいなければ真実を知らなかった。妖魔っていう生き物がいるとか、裏でそんな争いが起きてるなんて、何も知らなかった」

今のは伊藤だ。

「他の人だってそうだ。真実を知って、皆、反感を抱いている」

そして、沖田。

「別に妖魔が嫌いだとかないんだよ。別にそんなんどうでもいいんだよ。そんな事が行われて、俺達が何も出来ないのかって事なんだよ」

最後に東海。

「笹原さんも、覚えてる。高校の時には、世話になった思い出もある。俺達には、何も出来ないのか?」

見ず知らずの変身した俺に話しかけて来るほど、必死なんだろう。

「今なら、何も知らずに街に溶け込む事が出来る。お前等は一般人なんだからな」

「本気で言ってるのかよ」

「本気に決まっている。余計なことを言えば、消される可能性もある。それを覚悟で言ってるのか?」

他の人達を見ると、恐れが表情に出てる者もいる。

「ふざけんなっしょ!そんなんでビビる俺達じゃねえ!」

「ああ」

本当の痛みを伴う可能性がある。

彼等はまだ解っていない。

彼等には家族もいる。

家族を犠牲にする可能性があり、それを覚悟の上で行動が出来るのかどうかという事だ。