本土に辿り着いた時には、誰もいない。

島にはあれだけの人数を持ち出していたというのに、本土では誰もいないのは何故なのか。

おかしな部分は他にもある。

何故、冬狐は大型船の隣で、無傷でいられたのか。

急にきたとしても、見つからないほうがおかしい。

兵隊が追ってくる気配もなかった。

何故、ミールオルディンの情報をそこまで知っているのか。

まるで、近くにいたかのような発言だ。

最後に、何故、妹が捕まったかもしれないのに、行動を起こさないのか。

吐かないにしろ、冬狐ならば何かしらの行動を起こしてもおかしくはない。

まとめていけば、冬狐が無傷でいられる方が珍しい。

改革派の妖魔があれだけの傷を負っていて、冬狐には何もない。

安心しきっていたのか。

突如、俺の左眼が抉りとられる。

左眼は俺の生まれもってあるコアだ。

「そう、か」

無傷でいられたのは、冬狐が敵側の近くにいたのだ。

それも、敵ではなく、味方として。

理由は色々あるだろう。

しかし、今は思考が出来ない。

動く事も出来ない。

コアを抜かれた以上、俺は何もする術がない。

俺は前のめりに倒れた。

「悪いわね」

冬狐は俺のコアを持って立ち去っていく。

首領を抑える事無く、あっさり冬狐に倒された。