バニラ

(早く文之にこのことを伝えなくちゃ。でも私が文之に直接話したことがもしママの耳に入ったら?)


考えれば考えるほど分からなくなる。


それならいっそのこと送別会の日に用事があると言うべきか…。


しかしそれが良い方法だとはとても思えない。


それならと、違う日に振り替えられるに決まっている。


「今日は八時から六人の予約が入ってるから葵ちゃんお願いね。」

「はい…。あのう、ママさっきの話…」


「はいはい、準備しましょう。」

ミキは断ち切るようにカウンター席をそそくさと立った。