バニラ

「葵たん、ど~した?」

相変わらず甘ったるいその声は今の葵には尚更じれったい。


「何?何か用?あたし忙しいんだけど。
都合の良い時ばっかり掛けてこないでくれない?」


尖った声で文之に続ける。


「だいたい何なの?
アンタのせいで私今でもこんな生活・・。」

葵ははっとした。

言い過ぎてしまった気持ちがよぎる。

「ごめんな。俺がもっと力があればな。本当にごめん。」

すまなそうに、悲しそうに、恥ずかしそうに、そしてせつなそうに文之は葵に謝まった。

別に謝って欲しかったんじゃない。

何だかとてもイライラしてしまう自分に葵は戸惑っていた。


「もう、いいから・・。」

プチリと「切」にそっと指をやる。

文之はきっともうしばらく掛けてはこないだろう。