「文ちゃん、ちょっと飲みすぎ~!」ママはその白く細い手のひらを男の手の上に重ねた。

「葵ちゃん、この人ね文ちゃん。ママの昔からのお客様なの。もう10年以上の付き合いになるわねぇ~。お店のオープンの時も、とってもお世話になったのよ。葵ちゃん、たくさん気に入ってもらって彼の特別になれるよう頑張ってね。」

ママの話す顔には笑顔と僅かに鋭い眼差しがあった。
「はい、頑張ります・・。」葵にはこれだけが精一杯だった。