バニラ

入社して一週間が何とか過ぎた。


文之からのメール。


(明日は一時に迎えに行くからな。)


葵はすっかり忘れていた。


文之とマンションを下見に行く約束。


今の葵には文之しかいない。



「葵、あんまり元気ないな?
俺に会えなくて泣いてた~?」

いつものようにおどける文之。


「うん…。まぁそんなとこ…。」


「仕事どう?上手くいってるか?」



「それが、全然駄目で。
一人物凄く意地悪な先輩がいるんだ。」


「よしっ。葵、着いたよ。此処なんだ。」


文之が指を指す先には真っ白な建物があった。