バニラ

言われた通り、葵は帰ることにした。


入社してまだ三日間。

課に配属されてまだ二日間。


学んだことはと言えば現実と理想のあまりの相違。


葵は大きな悲壮感を抱え電車に乗り込んだ。

隣りの席の女子大学生が二人楽しそうに騒いでいる。

この間まで葵が普通にしてきたような光景。

あの頃、退屈に見えた毎日はきっと穏やかで楽しい日々だったのだと今頃気付く。


しかしもう二度とあの頃に戻ることは出来ない。