バニラ

3月29日はあっという間にやって来た。


まだ寒さの残る春の日だったが日差しは心なしか暖かく感じた。


あの日以来、店には一度も行ってない。


正直行くような度胸も理由も見当たらなかった。


強いて言えば、店を飛び出した日の日当をミキから貰っていないことぐらいだ。


しかし、それすら文之が与えてくれた。


何度となくミキから着信はあったが葵は出ようとはしなかった。


結局、残り3回の仕事を葵は無断欠勤してしまっていた。