「これを運んで」

「はい」



少女は大きな器をテーブルへと運んでいた。




「…手伝うよ」

「え?」



ふと横に目をやれば王子が立っている。



「そんな…王子は座っていて下さい。これは私の仕事ですから」


「…解った。じゃあ、その代わり俺のお願い聞いてくれる?」

「ぇ、あ…はい」



すると王子は少女の耳元で小さく呟いた。




「11時に裏の庭園に来て」

「っ…」



少女はビー玉のような美しい瞳を一層丸くして、王子を見上げた。


王子は少女の反応とは対照的に緩やかな笑みを浮かべてその場を離れていった。





トクン…トクン…ズキン……


高鳴る胸の中に潜む痛み。



少女を胸を押さえ、夜を待った…―――。