君ノ声





驚いて硬直する俺などお構いなしに、女はパタパタとバタ足をするようにして足の水を軽く払うと、素足のままズンズンと俺の元まで寄って来た。



一方的に驚かされまくりの俺は、なんだか面白くなくて眉間にシワを寄せる。



ほっておけばいい。


話しかけなければいい。




俺が恐くないのか?




これが暴力的な奴で、悠々と近づいてきたりして殴られたりしたらどうするんだろう、なんて考えてしまった。



いっそうやってみようか、なんて考えたけれど、行動に移す前にはもうすでに女は俺の眼前にいた。



背の差はざっと頭一個半分ってところだろうか。



見た目以上に小さい。



雪のように白く、折れそうなほど細い手足を見つめ、その先にある拳に俺は目を落とした。



「………」



ギュッと力強く握られている拳。



微かに震えているのは気のせいなんかじゃない。