水色のエプロン

私はもう一度カルテを確認した。すると二匹別々のカット内容が書き込まれていた。
「本当だわ。カット内容も全然違うんだ。リルは女の子で全体をそろえるカットで、ポッキーは男の子で、体に5ミリのバリカンを刈けて、脚もすっきりカットするのね。」
「あいつらは性格は違うが仲のいい二人組なんだ。」
「あら、そうなの、仲のいいカップルなのかしら。羨ましい。」
 するとその時お店の扉が開いた。
「おはようございます。藤田と申します。」
 そこには、二頭のシーズーを連れた、中年の女性が立っていた。
「いらっしゃいませ。リルちゃんとポッキーちゃんですね。お待ちしておりました。」
 私は二頭を繋ぐリードを受け取った。注文はいつも通り、夕方迎えに来ると言い残し藤田さんはお店を後にした。気になるところはリルの耳の後ろに毛玉が出来てしまったということだけだった。
「さあ、二人ともいらっしゃい。」
 私は二頭を繋ぐリードを引きトリミング室に移動した。
「まずはどちらから、終わらせようかしら。リルの注文はそろえる程度のカットだったけど、フルコートだったのね。」
 フルコート、ロングコートとも言うけれど、リルは綺麗なまっすぐな被毛を床に引きずるほど長く保っていた。シーズーの最大の魅力は何といってもゴージャスなコート。
中国の皇帝たちを魅了してきたシーズー。ボディや四肢のコートは床を引きずるほどに伸び、頭部も長い毛で覆われ、目と鼻をほとんど隠してしまうほどのストレートな毛を持っているのが特徴だ。家庭で飼う場合は、手入れが比較的楽なペットカットがおすすめ。最近ではペットとしてフルコートを維持して飼われている人は少ない。