水色のエプロン

「安心して、モモの気持ちは私がしっかり飼い主さんに伝えるから。」

　ブローが終わり、最後にモモが選んだ花柄のチョーカーを首に巻き、私たちはモモの飼い主さんが来るのを待った。やがて夕日がオレンジ色に海を染め始めた頃、小沢さんがモモをお迎えに来た。
「お待ちしておりました。」
　すると小沢さんはトリミング中のモモの様子を私に聞いた。
「やっぱりモモは太りすぎかしら。」
「いいえ、そんなことはありません。フレンチブルドッグはもともと骨量の多い犬なのでがっしりして見えますが、理想の体重はオス、メスともに８キロから14キロなのでモモちゃんの今の体重に何の問題もありません。」
「じゃぁなんで、お散歩の途中で歩かなくなるのかしら。」
　小沢さんは首をかしげた。
「フレンチブルドッグは、ただ歩くだけの散歩はあまり好きでない子が多いようです。すぐに息切れしてしまうのを見ても納得できると思うのですが。長時間の散歩は必要ありません。散歩は歩くと言うよりも、遊びの要素が強いと満足し、ストレスの発散にもなります。」
「そうだったの。そうとは知らずに毎日三十分は歩かせるようにしていたのよ。」
「それと、もしかしてなんですが。」
　獣医でもない私が、モモの体の異常について飼い主さんに報告するのは少し勇気のいる行動だった。
「もしかしてなんですが、モモちゃんヘルニアなのではないかと思ったんです。ソケイヘルニアに似た症状がでていたので。」
　小沢さんは驚いた顔をしてみせた。
「それも原因で歩かなかったの？」
　小沢さんは私に質問を続けた。