水色のエプロン

私はモモのぺちゃんこの鼻にシャワーの水が入らないように丁寧に指先を使って顔の皺の間を洗った。取りきれない物は蒸しタオルを使って丁寧に汚れを落とした。
「あぁ、そうしてもらえると、とっても気持ちがいいわ。よく鼻の上がかゆくなることがあるの。そこは自分じゃ届かないから。」
 確かに、かゆい背中に手が届かないときほど、もどかしいことは無い。モモのシャンプーが終わるとまたやさしくモモを抱き上げもう一度トリミング台にモモを載せた。
「毛が短いから、スリッカーより、ラバーブラシの方がいいかしら。」
ラバーブラシとは、ゴムなどの弾力性のあるやさしい素材でできたブラシのこと、やさしくマッサージと抜け毛取りができる。
私はキャスターからラバーブラシを取り出して、モモの背中をゆっくりとなでた。ドライヤーを当てながら。そして優しくモモの背中をマッサージした。
「背中は大体乾いたわ。お腹の下をかわかすから、ちょっと万歳のポーズをしてもらえる?」
 私はモモの前脚を左手で持ち、後の二本足でモモを立たせた。
「あぁ・・・。痛むわ。脚腰が・・・。」
 私は慌ててモモも両手を台の上に戻した。
「もしかしてモモ。ソケイヘルニアかも。」
 万歳をしたときに、股関節の内側辺りに、ぷっくりとしたしこりのような物が現れていた。
「ソケイヘルニア?それは直る物なの?」
 モモはまたコウモリのような大きな耳をシュンを閉じ悲しげな表情で私を見つめた。
「手術をすれば直るって聞いたことがあるわ。残念だけど私は獣医さんではないから、なんともいえないけど。だけどこの異変を飼い主さんに伝えることは出来る。」
 その言葉にモモは少し安心したようだった。