水色のエプロン

マーフィーは耳元でキラキラする青いリボンを気に入ったようだった。大きく口を開けてまるで笑っているみたいな表情で。
　マーフィーの飼い主の吉野さんに、仕上げが終わったことを継げる電話をかけると、近くに住んでいる吉野さんは、すぐにマーフィーのお迎えにやってきた。
「沢山お話できて楽しかったわ。」
　吉野さんにマーフィーをお返しする前に私はまた、そっとマーフィーにささやいた。
「僕も沢山お話できて楽しかったよ。ネオともいっぱいお話してあげて。僕たちだってお話は大好きなんだからね。」
「うん。わかった。」
　吉野さんはマーフィーのリードをもってお店を後にした。
「じゃぁね～ばいばい。」
　振り返り、バイバイと何度もなくマーフィーはまるで小学生の男の子のようだった。

「マーフィーは本当に騒がしくっておしゃべりなやつだな。」
　フレディーはカウンターの脇に立ちマーフィーの帰る後姿を見つめながらそう言った。
「でも楽しかったじゃない。それにまたいろんなことを教えてもらったような気がする。」
　ぐぅ～。
「やだ。」
　私のお腹が音をたてた。気がつくとポアロとマーフィーのトリミングに夢中になって、お昼ご飯を食べるのを忘れていた。
「アズの腹時計は時間にルーズだな。」
「うるさいわね。真剣に仕事をしていた証拠よ。フレディーにはおかず一つも分けてあげないんですからね。」
「ちぇっ。」
　フレディーはふて腐れて、私のお弁当を見ないようにカウンターの裏側で居眠りを始めた。頑張って仕事をした後のお弁当は格別においしかった。