「やっぱり無いわ。」
私は諦めて、さっき濡れてしまったエプロンをドライヤーで乾かして使うことを考えた。
あけてしまった箱やクローゼットを元通りに戻し、片づけを済ませ、一階に降りようと振り返ってみると。そこにはフレデリックの姿があった。
「びっくりした!階段を上がってきていたのね。」
 フレデリックは私が驚く姿にも動じず、今度はまっすぐ机の方に歩いていった。そして机の前に立ち止まり、机に付いた三番目の引き出しの匂いを嗅ぎ始めた。
「なに?そこになにかが置いてあるの?」
 私はフレデリックに歩み寄り、ゆっくりとその引き出しを引いてみた。するとそこには一枚の汚れた布が入っていた。
「何だろうこれ。」
 私はそれを手に取り広げてみた。
 すると、それは一枚の古びた水色のエプロンだった。
「汚いエプロン・・・。」
 かろうじてそれが水色だってわかるくらいだったけどそれは凄く薄汚れていて、使いこなされ、くたびれたエプロンだった。
「わぁ・・・。」
 私は一瞬顔をしかめた。だけどすぐに思い返した。
〝道具は大切にするもの〟
 さっきこの部屋に来て教わったこと、私はそれをすぐに実行したいと思った。
「フレデリック、ありがとう。このエプロンのありかを私に教えてくれたのね。」
 私はすぐにそのエプロンを羽織った。
「フレデリック、どう?似合う?」
 そういってポーズをとって見せたけど、フレデリックは全く興味なそうにそっぽを向くだけだった。