「ネオ、ネオは本当に幸せだった?私と一緒にいて幸せだった?」
 ネオは私の瞳を見つめていた。そこに言葉は存在しない。
 こぼれる涙を拭い、私はネオの体に頬を寄せた。
 言葉が帰って来ることはないと、解っているはずなのに、言葉を掛けずにはいられなかった。どんな些細な感情でもいい。それをネオと共有し、感じたかった。

「ネオは、どうしてあの日、雨の中で濡れていたの?」
 
 ネオの背中が私の涙で濡れていた。
 音の無い部屋。
 まるで宇宙に私とネオが二人だけになったみたいだった。




「きっと君に、梓に逢うためだったんだ。」




 その瞬間、ネオの言葉が耳に届いた気がした。




 「そしてボクは、君に会えて幸せだった。」



分かれが突然訪れるなんて思っても見ないことだった。
私は声を出して泣いた。羞恥心も忘れるほど。その別れの大きさは計り知れない哀しみを私にもたらした。
ずっと歳を取って、おじいさんになって、準備ができたら旅立つ物だって思ってた。
私はネオの体を抱きしめた。
「ネオ。」
 呼びかけても、目を覚ますことは無かった。小さな小さなネオの体はもう抜け殻だった。
 大きく揺さぶったら目を覚ますんじゃないかって思った。
 涙が止まらなかった。
 私はもっと強くネオの体を抱きしめた。
 ネオの首輪に付いた鈴が、再びチリチリと音を立ててなることは無かった。はかない命を目の当たりにした瞬間、命の重みを私は知った。

「そばにいてくれてありがとう。ネオ。私も、君にあうことができて幸せでした。」