私は立ち上がり、今度は自分の姿を確認した。エプロンはバークレイがシャンプー中暴れて跳ね返った水でビショビショだった。
「このエプロン・・・。」
 私はエプロンを、天気のいい晴れた裏庭で干すことにした。
 裏庭の扉を開けると気持ちのいい青空が広がっていた。
「気持ちいいわね。」
 私は青空の下で大きく伸びをした。
「バークレイのシャンプーはもう終わったのかい?」
 いつの間にか犬小屋から移動し木陰で眠っていたフレディーが私に声を掛けてきた。
「終わったわ。」
「早かったじゃないか。」
 私はフレディーの目の高さにかがんでにっこり微笑んで見せた。
「私だってちょっとずつ成長してるんですから。犬の扱いだって少しずつ上手になってきてるのよ。」
 フレディーは、そうかい。と一言だけ言って目を閉じた。
「だけど、エプロンがこんなに濡れちゃった。」
 私はそう言ってフレディーに水色のエプロンを開いて見せた。
「それじゃどっちが水浴びをしたんだかわからないな。」
 フレディーは呆れ顔で私を見上げていた。私はエプロンを外し物干し竿に洗濯ばさみでエプロンをくくり付けた。
「ねぇ、フレディー何度か聞こうとしたと思うんだけど。ここの鍵についているペンダントに刻まれたsince1999っていったい何の数字なの?今日こそ教えてよ。」
 フレディーは大きなあくびをして目を瞑った。
「ねぇフレディーったら。」
 私は口を開かないフレディーの体を揺さぶった。
 フレディーは私の目をチラリ見ると何も言わずそのまま目を閉じた。