「気持ちいいでちゅ。」
「あなたのママに、もう少しこまめにお手入れに出してもらえるように言っておくわね。長い間、綺麗な毛並みを保持して、毎年いい毛が生えてくるようにね。」
「よろしくでちゅ。言っておいてくだちゃいでちゅ。」
 ミルの体をブローすると。さっき取りきったはずなのに。まだまだ、取りきれていない余分な毛が抜けた。するとその時、いつの間にかトリミング室を覗きに来たフレディーが、その様子を見て声を漏らした。
「ミルはそんなに小さいのに、沢山毛がぬけるんだな。」
 突然フレディーに声を掛けられたミルが叫声をあげた。
「誰だ!誰だ!誰だ!誰なんでちゅか!」
「オイラだよミル、フレディーだよ。半年振りで忘れちまったのか?」
 ミルのその様子に、フレディーは慌てて自分の名前を告げた。
「フレディーでちゅか?久しぶりでちゅ。」
 ポメラニアンはコロコロ可愛く活発な性格だが、見知らぬ人には神経質で、吠えたりする事もある。他の犬にも警戒心が強いため、攻撃的になったりする面もる。
 小さなミルに吠えられ、慌てるフレディーの姿を見てなんだかおかしくて笑ってしまった。
「何がおかしいのさアズ。」
 フレディーは笑う私を納得がいかなそうな顔で見上げた。
「なんでもないわ。それより、ポメラニアンの先祖は、スピッツやサモエドって言われているのよ。もしかしたら二人のご先祖様もどこかで繋がっているかも知れないわね。」
 私は、ミルをブローする手を止めることなく二人に、いや、二頭の犬にそう言って聞かせた。
「そうなんでちゅか?だからボクたち、形が似てるんでちゅね。」
 ミルはそう言ってしっぽを振った。
「よかったわね。」