水色のエプロン

もしかして、お店に来る犬達が特殊なの?だけど、トリミングをしていても、そんな風には感じなかった。それともお店に入ると、犬の言葉が聞こえるようになるの?でも、お店に入ってくるお客さん達には、犬の言葉は届いてはいなかった。フレディーの散歩で、お店の外に出たときも会話をすることができた。
頭の中で答えを捜し求めても、答えにたどり着くことはできなかった。心の中で迷子になってしまいそうだった。
 するとその時、携帯の着信音が部屋に鳴り響いた。手に取りディスプレイを見ると店長からの電話だった。私はペアボタンを押し電話を耳に押し当てた。
「もしもし、お疲れ様です。」
「お疲れ様。どうフレンドでのトリマーとしての仕事は、順調?」
「はい。頑張っています。」
 たった数日店長に会ってないだけなのに声を聞くと、懐かしさに似た感情が込み上げてきた。そしてここ数日の出来事、さっきまでの疑問が、もう一度大きな波になり、私の心に押し寄せた。
「なんか声に元気が無いんじゃない?」
 その言葉にハッとした。私は犬と会話ができるようになった。その事実が喉まででかかった。言ったら何て答えが帰って来るのだろう・・・。
だけど私は事実を言葉にすることができなかった。
「そんなことありません。」
 そう答えると店長は話を続けた。
「明日の木曜日はお店が定休日だけど、フレデリックの散歩と餌やりだけ行ってもらっても平気かしら。」
 私は大丈夫だと答えた。
「もう少しでオーナーは退院すると思うから、あとちょっとだけ、一人で頑張ってね。」
 店長はそういい残し、電話を切ろうとした。