水色のエプロン

乾かしが終わること、トリミング室のドアの隙間からフレディーが中の様子を覗きに来た。
「ミート。また太ったんじゃないか？」
　ミートの姿を目の当たりにしたフレディーがそう言った。するとその言葉にミートが反論した。
「これはむくんでいるだけなんだよ。フレディー！君だってデッカイ体してるじゃないか。」
「オイラの膨らんだ体は、ほとんどが毛なのさ、毛の中身は案外スリムなんだぜ。」
　フレディーはそう言ってふさふさの毛をブルっと震わせて見せた。
「キャバリアって名前は、騎士という意味で、騎士らしく雄々しい感じがする犬だって言われていたのよ。これじゃそれも形無しね。」
　するとミートはしょんぼりとしっぽを下げて見せた。
キャバリア・キングチャールズ・スパニエル。それがキャバリアの正式名称。キングチャールズとは、イングランド王チャールズ1世・チャールズ2世のお気に入りの犬で、出かけるときもいつも連れ歩いていた、というところから来ているそう。もともとからして、貴族の高級犬だったんだ。
「だけど、ふとった理由はなにもミートが全部悪いわけじゃないのよね。」
　暫くミートの洗い息遣いを見ていると、なぜかこっちが悲しい気分になってきた。
「よし、私がミートのお母さんに、ミートのダイエット計画を持ちかけてみるわ。」
　ミートはおやつがなくなるのは困るけど、もっと自由に走り回ったり、将来病気になるのが怖いといって、ダイエットをすることに賛成していた。