水色のエプロン

コハクはニヒルな言葉を並べた。コハクは本当に面白いお爺さんだった。
グルーミングを終えると、飼い主さんに電話をし、やがてお迎えが来た。
「コハク爺さん、長生きして、また私に会いに来てね。それから、ギネス。期待してるから。」
　私は帰り際そっとコハクに耳打ちをした。お元気でまたあう日まで。
　私がお店を後にする、コハクに手を振っていると、外の庭で十分昼寝をしてきたフレディーが戻ってきた。
「コハクじいが来てたのかぁ、あの爺さんはいつも元気だよな。」
　あくびをしながらフレディーはつぶやいた。
「フレディーだって、コハク爺さんに負けないぐらい長生きをしてね。」
　私はそっとフレディーの真白な頭をなでた。

「午後は時間が余りそう。」
　私がそう言って伸びをしていると、お店の電話が鳴った。飛び込みの予約の電話だった。当日の予約を取る余裕もできた。私はこれから連れてきていただけるように、電話での対応をした。
「フレディー。これからキャバリアのミートがシャンプーに来るんですって。」
「ミートかぁ、あいつにあうのも久しぶりだなぁ。」
　その電話から暫くすると、キャバリアを連れた女性が来店した。
「どうも、熊井です。突然予約入れちゃってすみません。」
　熊井さんは中年の小太りな女性だった。
「ミートちゃんですね。お待ちしておりました。」
　ミートに目を落とし、よく見ると、ミートはハーハー息をしていた。メタボ犬･･･。私は心の中でそうつぶやいた。
「お尻の毛を少し切っておいて貰えるかしら。後はシャンプーコースでお願いします。」