その日の最後の授業が終わると
勇気はさっさと帰って行った。


…え…?
あたしどうすればいいの?


でも一応言われた通り
いつもよりゆっくりゆっくり
自転車をこいで暗い住宅街を走ってみる。


…なんも起きないし!


少しイライラして
ペースを上げたその時
遠くの街灯の下に人影が見えた。


いつも誰もいないから
怖くなって走り抜けようとしたら
立っていたのは不審者ではなく
まさかの勇気だった。


「ゆっくりこげとは言ったけど遅すぎだろ、お前」

「勇気がいるなんて知らなかったし!」

「はいはい。怒んなよ」

「なっ…なんでいるの?」

「ん?会いたかったから」


さらっとそんなことを言われて
顔が真っ赤になる。


「行くぞ」

いつかも聞いたような台詞。

大きい背中。

さっきの台詞。


ドキドキが止まらない。



着いたのは、あたしの家の横の
空き地だった。

あたしの家は
細い道の奥にあるから
人通りも少ない静かな場所。



この心臓の音、
聞こえちゃうよ……っ