30分位して芽衣らしき女の子が車から降りてくるのが見えた。
俺はドキドキワクワクして見ていた。

でも運転席を見ると、由美ちゃんとは似ても似つかない男が乗っていた。
頭の血が引いていくのがわかった。

なんで?どういうこと?

芽衣は楽しそうに荷物を抱えてこっちに近づいてくる。
マンションに入る前に車に向かって手を振っていた。

入ってすぐ横の俺に気づいた。

すごくびっくりしている。
「おかえり。」
とりあえず何か言わなきゃと出た言葉がこれだった。

芽衣は何も言わない。俯いてしまった。

「荷物持つよ。」
と芽衣から強引に荷物を奪った。

歩いてエレベーターのボタンを押した。振り返ると芽衣は立ち尽くして動いていない。

「どうしたんだよ。」

俺はなるべく優しい感じでいった。

あの時俺は、きっと何もなかった、見なかった事にしようとしてたのかもしれない。

芽衣が俺を裏切るわけないし、このまま知らない事にしておけば今まで通り普通にやっていけると思っていたのかもしれない。