その夜、仕事を終えたサトル君が家に来た。


走ってきたのか汗だくになっている。
時刻は0時をまわりそうだった。


私はすっかり寝る支度が終わりあとはベッドに入るだけだった。

汗だくのサトル君を、快く迎え入れた。
麦茶を出して、テーブルに置いた。


見るとサトル君はまだ玄関で靴も脱いでいない。


「どうぞ?」

あがらないのかと不思議に思いながら言った。

「なんか話があるんじゃないの?」

少し息が荒くサトル君が言う。
私は一瞬考える。
「特にないよ。ちょっと話がしたかっただけ。もう帰る?」


「もう寝るだろ?」


「うーん…。」

私は曖昧に返事する。

私は洗面所に行きタオルを持って来てサトル君の顔にあてた。

「すごい汗、シャワー浴びる?」


サトル君は無言でタオルを取り、首のまわりを拭いたら私に返した。

「ありがとう、今日は遅いから帰る。おやすみ。」


ぎこちなく笑顔を作っているようだった。

素っ気ない口調で言うとすぐに出ていってしまった。


サトル君が出ていったドアを見つめそこに立ち尽くす。
寂しさだけが残った。

サトル君と一緒に居たかった。

今頃自分の気持ちにはっきり気が付いた。