佐倉正貴(29)と初めて出会ったのは、私が高校に入学式したての去年の放課後

私は泣きながらひとり下校していた

信号待ちをしていると隣に自転車が止まった

ふと見てみると若いお巡りさんで彼もこっちを見た

私は即座に鼻をすすり涙を拭き、泣いていませんよと言わんばかりの澄ました顔をしてみせた

彼は一瞬表情を変えて何か言いたげな顔をしていたが、信号が変わると自転車を走らせ私を抜かし行ってしまった

私はなぜかその場から動けなくなり、彼の青い制服を身にまとった背中をずっと見ていた

気がつくとさっきまでの悲しさは吹き飛び、頬の涙もすっかり乾いていた