差し出されたのは左手。
夜店の光が龍の背後で輝いていて。
きっと少し前までの私なら、簡単に手を伸ばしていた。
でも、それが今出来ない。
変に意識してしまう。
胸が、詰まる思い。
「ほーらっ、何してんすかっ」
「わっ…!!!」
「りんご飴食べます?あー、でも先になんか食べましょか」
手を握られ、グイッと引っ張られる。
そしてそのまま私は龍の隣へ。
繋いだ手は、離れない。
ニコニコと微笑む龍はいつも通り。
私も顔を赤らめながら頷いて。
意識してるのは私だけ?
意識してるのは好きだから?
なぁ龍。
今先輩として見てる?
女として見てくれてる?
心が、痛い。
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