私は慌ててカップをテーブルに置き、携帯電話に手を伸ばした。 画面の表示を一瞬確認し、すぐに電話に出た。 『もしもし!?』 『お~、着いたぞぉ~』 逸る私とは裏腹に、電話の向こうからは緩やかな応対。 彼の名前は“クロちゃん”。 クロちゃんは私の仲の良い“お客様”である。 『すぐ降りて来る!』 それだけ言って電話を切り、部屋を飛び出し、クロちゃんの元へ急いだ。