真っ黒な玄関の扉を 重々しく開けて あたしは家に入った。 確かに広い。 あたしの部屋だって ちゃんとあるし 家具も充実している。 あたしは真っ先に キッチンへ向かって 灰皿を探した。 お気に入りの灰皿が あるべき場所になく、 しばらくリビングを うろうろすると 机の上に 書き置きと壱万円札。 【適当に買って食べて】 手紙には そう書かれただけ。 あたしは無性に苛々して 手紙をビリビリに破き お金だけ 取って部屋へ向かった。