「男用の着物は、血がついてしまったんですが、女用の着物は大丈夫です」

水色の着物を美代に差し出すと、美代はぶわっと涙を流した。

「アンタ…ッうわぁぁぁぁぁっ」

泣き崩れる美代を抱きしめながら、千歳も泣いた。

しばらく島には泣き声が響いていた。


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「というわけじゃ。それから私は、島を渡りここへ来た」

老母は、百合子の着ている水色の着物を指差した。

「…これが、千歳さんが買ってくれた着物?あれ、お母さんは…?」

老母は、ニコッと笑った。

「お前の母親は、どうもこれを着るのを嫌がってね。だが、お前は喜んで着てくれた。もしかしたら…」

老母は、また空を見つめた。

広い広い空を。

「お前は、夏の生まれ変わりなのかもね」