「宿題は自分でやるもんでしょ」


「えー? それお前が言う? 化学の宿題、ぜんぶ俺のノート借りてるくせに?」


 化学、と聞いただけでなぜか胃がムカムカしてくる。


「だって私、化学嫌いなんだもん」


「だろ? ほら、お互いさま―」


「……わかった。何のノート?」


「数学」


「数学とか……式を丸映ししたら一発でバレるでしょうが」


「いーの、いーの。適当にごまかしとくから。サンキュー」


 私からノートを受け取って、石川はそれをリスニングの教科書と一緒に持って立ち上がる。


「あんたまさかリスニングの授業中に映そうっていうんじゃ……」


「だって数学、2限目じゃん。やるヒマないじゃん」


 当然のように、石川は頷いた。


「まあ勝手にしてよ。バレても私を巻き込まないでよね。私はノートを貸しただけだからね」


「ほーい」


 本当にわかってるんだろうか。


 黒板に書いてある日課の5限目に化学の文字を見つけて、私はわずかに目を細め、それからリスニング教室に移動した。