先生さまはキスで繋ぐ

「はああ!? んなわけないでしょ!?」


「ちょっ、待ってよ。冗談じゃん。あれ、見蕩れるほどの顔してないし」


 突然大声を出した私にびっくりしたらしく、円華は目を瞬いた。


「あ、ああ……そうだよね」


「ハルカ、今日おかしいね。恋煩いかなー?」


 楽しそうに円華は言う。


完全に面白がっている。


「うるっさい。ほら、移動なんでしょ。行くよ」


「はーい」


 まったく友達がいのない子だわ、とため息をついて、私は席を立つ。


「藤堂、ノート貸して」


 ニュッと手が伸びてきて、私のゆくてを阻んだ。


「……石川」


 ニコニコと期待のこもった眼差しで私を見つめているのは、後ろの席の石川藤馬(とうま)。


クラス替え当日に、同じ「藤」の字が入ってるねーなんて他愛もない会話をしてから、ヤツは私の男友達の筆頭を歩んでいる。