先生さまはキスで繋ぐ

 フンッ、と鼻息も荒く言った私に、円華は呆れ顔。


「過激だねえ……」


「あんたは知らないから過激とか言えるのっ! アイツがしたことの方がよっぽど過激よ」


「え、なになに? 過激なの? 教えてよハルカぁ」


 急に身を乗り出して、円華は興味をそそられたように言った。


「いきなりノリノリになったね」


「過激なことをされたと聞けば黙っていられないよね」


「あんたさっきから喋りまくりだったでしょうが」


 私はため息をつく。


 やれやれと肩をすくめたその瞬間、ざわついていた教室が静まり返った。


 担任がショートホームルームをしに来たのか、と黒板を向いて、私は眉間にしわを寄せた。


「野口先生が午前中は出張で不在だから、僕がショートをします。連絡事項がいくつかあるから、きちんと聞いてるように」


 教卓の前に立つのは、担任の野口春代(のぐち はるよ)37歳ではなかった。


 スーツの上から白衣を当然のように羽織っている、無造作ヘアーと言えば聞こえのいい髪形をして、黒縁のメガネをかけた、年齢29歳、身長180cmの、


「午前中に何か問題があれば、北口のところに来るように」


 ――北口彼方、だった。