元モデルの涌井は39という年の割には若く、いつもおしゃれにスーツを着こなしているような男で、要にとっては頼りになる兄のような存在だった。


「こないだの話って・・・・・」


「ドラマの話だよ。今度オーディションがあるって言っただろ?やってみる気があるのなら、エントリーしとくから」


そういえば、先週そんな話をしていたっけ・・・・・。


ふと、要の脳裏にゆずの言葉が蘇る。


『―――要さんて、すごく人を惹きつける雰囲気があるから、ドラマとか映画に出たら、それだけで絵になりそうな気がするけど』


もちろん、ゆずからしたら社交辞令のような言葉だったかもしれないけれど・・・・・


それでも、この時の要の心を動かすには十分力があったようで。


「―――やってみます」


と、応えていたのだった・・・・・。