「はい、じゃあ荷物取りに行くか」
仕切りなおしとばかりに、明るい声で言ってみた。
これ以上、美桜に聞いても言っても、どうせ期待した答えなんて返ってくるわけがないし。
また“ウザイ”とか言われて、喧嘩状態になるだけだし。
俺はMじゃないけど、Mのふりをして好きな女に合わせるのも悪くないのかもしれない。
「哲ー」
「んぁ?」
見下ろした美桜からの不意打ちのキス。
多分、俺はすげーマヌケな顔で。
目も開けたままで。
ダサかった。
軽く触れただけの唇は、すぐ離れてしまったけど。
すげー柔らかかったんだ。
そんな事をする美桜が愛しくて思わず、抱きしめた。
もう一度、キスしようとした瞬間、唇に当たる掌。
「んご?」
怪訝な顔をした俺に、指差される方向は下半身。
「これ、当たってんやけど」
そう言ったのは元気になった俺の分身。
そんな事、普通言うかー!?
今、超いいところなのにっ!
ここでソレ言っちゃうの?
『あほちゃう?』
そう言いながら笑った美桜は、俺の腕からスルリと抜け、マンションまで歩き出した。

