「夏葵…?」
「………ッ翔太はっ!!」
あたしは力をこめて言った。
「……たのしそーに、走ってた…」
「夏葵………」
「……きっかけは、逃げ場かもしれなくてもッ…翔太は………スプリンターだよ…」
スプリンター。
短距離走者。
翔太に、いちばんにあう言葉だよ…
「………あたしだって…中学んとき陸上やってたんだからっ…」
何いってるかわからない。
「……翔太の走り見てッ…才能あるかどうかぐらい、わかるんだよ…!!」
「…………夏葵」
「………だからっ…逃げ場なんて言うなばかーっ!!」
そう言って泣き出したあたしを、翔太が優しく抱き締めた。
「…夏葵……ありがとう…」
