龍一のことを話したのは、初めてだった。
翔太なら、いいかな…
「お前…」
「あは…だから、柄じゃないのわかってるけど、ギターやってるんだぁ」
そう言って笑うと、翔太があたしの頭をなでた。
「そっか…」
そう言って、優しく。
「俺はさ」
翔太が、話し出した。
「………兄貴が、有名なサッカープレイヤーなんだ」
「……え……?」
翔太の、お兄ちゃんが?
「…サッカー、翔太はやらなかったの……?」
「やってたよ」
そう言った翔太の顔は辛そうだった。
「………俺はさ…、兄貴といつも比べられて…嫌気がさして、陸上を始めたんだ」
翔太の過去を知り、戸惑うあたし。
「…………陸上は」
翔太。なんで、そんな…
「俺の逃げ場だったのかな…」
辛そうな顔、するの…?
「……違う!」
あたしは、叫んでいた。
