「………夏葵、バンドやるんだ?」
黙って見てた翔太が言う。
「…っえ!?あ、あ…うん…」
もうッ…美羽が変なこと言うから、意識しちゃうよ…
「………晴輝と拓哉って…誰??」
翔太が、真剣な顔で言う。
「………え、なんで…」
「……誰だよ」
翔太が、変…?
「………バンドのメンバーだよ…?」
「……そ、か…」
「……翔太?何か変だよ?どっか痛いの?」
「夏葵」
っ!!
翔太が、真剣な顔で、目で、声で、あたしの名前を呼ぶ。
「………ごめん、なんでもねぇ」
「…そ、……っか…」
あたし、絶対今顔赤いよ…
「………でも、また翔太が走ってんの見に来るよ」
あたしは、翔太の目をしっかり見て言った。
「…………翔太が走ってるの見てるとね、きもちーから」
「……夏葵」
翔太は、あたしの頭を軽く引き寄せ、優しくあたしを包むように抱き締めた。
「…翔、太…?」
「……夏葵、さんきゅ」
翔太は、たくさんあたしにお礼を言った。
「…………なんで、翔太がお礼言うの?陸上の楽しさ教えてくれたの翔太なのに」
そう言ってあたしは笑った。
