白いベンチに横になっていたエドと呼ばれた青年は、エミリアの大声に渋々体を起こした。

「エミリア、別に講義をサボったんじゃないですよ。ちょっと休憩していただけです」

「それをサボったと言うんです!」

エミリアに強く言われ、青年は首をすくめた。

彼の名前はエドガー・エヴァンズ。エミリアと同じく、ルードロブグルフ大学の二年生である。
ミルクティ・ブラウンの髪は様々な方向に自由に跳ね、着ているシャツの袖の釦は取れかけている。
「ほらほら、早く起きてください!教授に謝りに行きますよ!ああもう、その前に釦直しますから着替えて下さいねっ!」

後輩のはずが、まるで母親のような素振りを見せるエミリアを困ったように見つめ、エドガーはベンチから腰をあげた。

「君は初めてであった時もそんな感じのことを言っていましたね」
そう言って猫のように伸びをし、校門にむかって歩きだすエドガーの後ろ姿を見ながら、エミリアは2ヵ月前のことを思い出していた。

彼と出会った、あの冬の日のことを。