「事件のことを調べていくうちに、これとまったく同じ手紙が誘拐されたと思われる人々のところに送られてきていることが分かったんです」
「私は何処かな、という文章から、この手紙が犯人から僕たちへの挑戦状だと言うことが分かりますね」
そう言うと、机のうえに広げられた手紙を持ち上げ、エドガーは観察をはじめた。
「光に透かしてみても最初の文字を繋げて読んでも文章にならない……やはりこの文の中からヒントを見つけだして暗号を解読するしかないのか……」
そう呟きながら唇に手をやり、ぶつぶつと何かを言い出したエドガーを見て、驚いたようにしているエミリアをフェニアス教授は微笑みながら眺めた。
「キャメルくん、まあ見ていたまえ。エヴァンズの頭脳ならば解けない暗号はないだろう。今までの難事件だって、彼はタイムトラベルの能力と頭脳で解決してきたのだからね」
何処かうれしそうに話すフェニアス教授からエミリアはエドガーに視線を移した。
彼は未だに暗号を見つめ続けている。
その頭の中ではいくつもの数式や単語が行き交っているのだと思うと、エミリアは何だか胸が高鳴るような、体の奥底から熱いものがあふれ出てくるような不思議な感覚にとらわれ、思わずため息をもらした。


