「はい、どちら様です、か…」 目があって私だったことに気づいたのか夏樹の目が見開かれていく 「奈緒…」 「来ちゃった…」 どうしよう… 久しぶりに夏樹の顔見たら泣きそう 「あの…話があってきたの」 「ん、とりあえず上がって」 玄関に招かれ、スリッパを出してくれた そんな些細なことに嬉しさを感じてしまう 「そこ座ってちょっと待ってて」 「あ、うん…」 あの日と一ミリも変わらない部屋 「何にもなくてお茶で悪いな」 「ううん、ありがとう」 それっきり私も夏樹も話さない