口を開けて驚く市毛に

「ここにトランプがあります」と妙に冷静な口調で、普通のトランプを見せた。

「はいっ?」と聞く市毛に
唯はトランプカードを纏めて手に持つと、横を向いて

「一枚引いてよ」と、横目でどことなく冷たく言った。

「は、はい」とカード引いた市毛に

「見た?見たら、そのままカードをもどして」と唯が手を出して指示をした。

チラッと見たカードは「ハートのエース」だった。

市毛は指図どおりに、カードを唯の手に戻すと

「軽くカードを切って」と横をむいて、市毛にカードを渡して言った。

指図どおり、三回ほどカードを切って「はい」と市毛が答えると、

唯はカードを受け取り、カードを見ながらニンマリと笑って
「コレでしょ?」と「ハートのエース」を市毛に見せた。

「おお!」と市毛が驚くと

「なぜ当てられるか解る?」と唯が市毛に聞いた。

カードの裏表を見ながら「さあ?」と答える市毛。

唯はカードの表側を見える様に並べながら
「全部のトランプがそうじゃないけど、このカード、見るとホラ」と指差しながら

「カードの斜め左上にある上下のマーク、片方が青で片方が赤でしょ」

唯は机の上でトランプカードをまとめながら

「この左上のマークの色を同じ方向にまとめて持って、一枚引いてもらう」

「で、カードを見ている間に、持っているカードを180度、さりげなく向きを変えると」

「ああ!」と市毛が首を縦に振った。

「戻されたカードだけ、マークの色の向きが違うのか!単純なトリックですね」

「そそ、その単純なものかも、神様は」と唯が言った。

「手品って、不思議に見えていても、タネが解ると“な~んだ”になるでしょ?」

「今解っている晒し神は、不思議な事だらけだけど、単純に考える方がいいと思うの」と、
トランプを片付けながら話す唯に

「なにか事情聴取で掴んだようですね?」と市毛が尋ねると

「ちょっとだけね~、憶測の域は出ないけど」と、市毛の目をじっと見て

「で、それが正しいのか、実験してみたいの」と唯は言った。