「……お前ってさ、キャラ作ってるよな?確実に。」

「キャラって?」

「先輩の前だとあきらかにキャラ違うじゃん。」

「作ってねぇけど。」

「いや、作ってるね」

「作ってねぇよ。俺はただ誠実な後輩を演じてるだけで。」

「やっぱ、演じてるんじゃん。」

「あ、いけね。バレた。」

つい口が滑った。

つーか、演じてるっつっても口調ちょっと変えてるだけなんですけど。

後輩だから敬語はトーゼンですし。そんなの演じてるうちに入りません。

それに、こんなに口調が悪くなるのは君の前でだけですよ?

一応学校では優しい人で通ってるんで。

「そのキャラ、バレたらどーなんだろうな?」

「別に大丈夫じゃねぇの?」

「だといいけど」

それ以降会話はなく、待ち合わせ場所に着いた。

もちろん俺は匡樹くんが疑問を持つ口調で話しかけましたよ?

まぁ、振り向かせるためなら何だってするんで、この口調も出すかもしれないけど。

…覚悟してなよ?



拓哉の心の中にこんな決意があったとは全く知らない結菜は、これから行くであろう海のことをのんきに考えていたのでした。